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紙一枚から社会を想像する ― 美術の授業における生成AIの活用 ― 高校芸術 美術選択1年

本校の美術の授業では、生成AIを「作品を作らせるための道具」としてではなく、生徒の造形的な発想を広げる思考ツールとして活用する試みを行っています。
身近な素材や気軽なドローイングから始まる造形活動でも、AIを使って社会の中に置いてみることで、生徒の想像は大きく広がります。
今回はその実践として行った授業をご紹介します。

コピー用紙一枚から建築を考える(高校1年)5時間

高校1年生の授業では、「コピー用紙一枚で立つ構造をつくる」という課題に取り組みました。
生徒たちは、紙を・折る ・曲げる ・支え合わせるといった操作を試しながら、試行錯誤を繰り返して自立する立体構造を制作します。
最初は単なる紙の形だったものが、制作を続けるうちに、彫刻のような造形や建築模型のような空間へと発展していきます。
完成した作品は写真に撮影し、その形をもとに生成AIを用いて建築のモックアップを作りました。
同じ形でも、・木造建築 ・ガラス建築 ・公共施設 ・教会 ・パブリックアート(記念碑)など、素材や場所を変えることでまったく違う建築として現れます。

この活動を通して、生徒は「形が社会の中でどのような意味を持つのか」を考えるようになります。

<授業の前に・・・>
生徒たちは去年の秋に校内のスケッチに挑戦しています。本校は特徴的な校舎のデザインが多く、魅力的な空間は描きたい気持ちをくすぐります。また、現在大学で建築を学んでいる本校卒業生から自然の形態に構造のヒントがあるとメッセージをもらい、身近な建築や構造の美しさに目を向けるようになりました。

造形を社会につなげる学び

今回の授業には大切な考え方があります。
それは、身近な造形を社会のスケールで想像してみる ということです。
コピー用紙やノートの落書きのような小さな創造でも、建築や公共空間といった社会の中に置いてみることで、新しい意味が生まれます。生成AIは、その想像を可視化するための「想像の実験 装置」として活用しています。

生徒の優しいまなざしと造形的挑戦

生徒たちのまとめを見ると、単に形を作るだけでなく、その形が社会の中でどのような意味を持つのかを丁寧に考えていることが伝わってきます。
ある生徒は、地域の猫のための小さな家、災害時のプライバシーを守るシェルターを考えました。
また別の生徒は、都市に建つアリーナを構想し、素材の違いによって建物の印象や役割が変わることを考察しています。
そこには、社会や他者へ向けられたやさしい視点 と、新しい形を試してみようとする造形的な挑戦 がありました。

本校の美術の授業が育てるもの

美術の授業では、絵や作品を作ることだけでなく、
・形をよく観察する力
・自分の考えを形にする力
・社会の中でデザインを考える視点を育てています。
身近な素材の探求から始まる造形活動が、社会の中のデザインへと広がる体験を通して、生徒たちは自分の創造が社会とつながる可能性を感じることができます。
これからの美術の教育においても、心が動く経験と手で作る体験を大切にしながら、新しい技術を活用して生徒の想像力をさらに広げていきたいと考えています。